クリスマス・メッセージ 左近深恵子
クリスマスの出来事は天使を通して伝えられました。エルサレムの神殿で祭司の務めをしていたザカリアに、ナザレの町で暮らしていたマリアに、ヨセフに、ベツレヘムの郊外にいた羊飼いたちに。どこかに潜んでいるかもしれない獣と盗人から羊を守るため、広い大地の只中で、夜の闇と冷え込む空気に身をさらすように共に野宿をしていた羊飼いたちは、突然主の栄光にさらされ、恐れ惑いました。羊飼いたちとは異なり、それぞれ神殿の聖所や家の部屋で一人きりでいたザカリア、マリア、ヨセフは、天から自分にみ言葉がもたらされるという出来事に一人で直面することになりました。恐れがあり、受け入れ難い思いがありました。しかし彼らはたった一人の者のところにも降り、語り掛けてくださる神さまのみ心と聖霊のお働きに包まれた中で、恐れ抗うことができました。いと高き方の力に覆われながら、直ぐに応える者、暫くの時を要する者、それぞれに必要な時を経て、天からの言葉とクリスマスの出来事を受け入れてゆくのでした。
かつて山々のような力に主なる神と自分たちの間を塞がれ、神さまのみ心を求める生き方を阻まれていたイスラエルの民は、「どうか、天を裂いて降ってください。み前に山々が揺れ動くように」と主に願いました（イザヤ63：19）。人々と天の間に立ちはだかるのは人々を取り巻くものだけではありません。主が愛と憐れみをもって彼らを贖い、絶えず担ってくださってきたにもかかわらず、主に背き、主を苦しめる彼らの内なる闇があります。彼らの行動に滲み出し、主から引き離します。「わたしたちは皆、汚れた者となり、正しい業もすべて汚れた着物のようになった。わたしたちは皆、枯れ葉のようになり、わたしたちの悪は風のようにわたしたちを運び去った」（イザヤ64：5）。神の民は、ただ贖い主の憐れみを拠り所に、救い祈り求めてきました。
クリスマスの出来事は、天を引き裂き、地の基を揺るがすほどの圧倒的なみ業で、ご自分と私たちの間を塞ぐものを切り裂くものでした。主はザカリア、マリア、ヨセフ、羊飼いたちそれぞれの人生の中へと、生活の中へと、み言葉を携えた天使を遣わされ、恐れや不信が澱むこころに救い主の到来を告げてくださいました。神さまとの間を塞ぐものを引き裂くことも、押し戻すこともできない私たちのところに、神のみ子が降られると。
神のみ子が人としてお生まれになりました。この方によって主は世にご支配を明らかにしてくださり、主のご支配の内に安らいで生きることのできる、天に至る道を私たちに与えてくださいました。その名は「インマヌエル」と呼ばれると、「神は我々と共におられる」（マタイ1：23）という意味であると福音書が名を告げる方が、私たちの間に宿られました。天を引き裂いてもたらされた救いのみ業は、み使いと共に過ぎ去るものでも、クリスマス・シーズンと共に通り過ぎてゆくものではありません。神は私たちと共におられます。
